アニメ化もされた和風ファンタジー小説『かくりよの宿飯』(かくりよのやどめし)。
この作品には、実は漫画版が2種類存在しているのをご存じでしょうか。
この記事では、2つの漫画版を紹介しながら、なぜ並行して存在しているのかを考えていきます。
原作小説『かくりよの宿飯』
『かくりよの宿飯』は、友麻碧(ゆうまみどり)さんによる和風ファンタジー小説で、2015年4月から富士見L文庫(KADOKAWA)より刊行されています。
心温まる料理や交流を軸に異世界のあやかしと人間が織りなす物語は多くの読者を惹きつけ、2018年にはアニメ化もされました。
『かくりよの宿飯』マンガ版は2つある

そんな人気作『かくりよの宿飯』には、実は漫画版が2種類存在しているのをご存じでしょうか。
どちらも「かくりよの宿飯 あやかしお宿に嫁入りします。」という同じタイトルですが、作画や掲載誌、ストーリーの進め方には違いがあります。
衣丘わこ作画『B’s-LOG COMIC』版
最初の漫画版はKADOKAWAの女性向け雑誌『B’s-LOG COMIC』で連載されているもので、作画は衣丘わこ先生が担当しています。
2016年11月に単行本第1巻が発売され、2025年現在では第11巻まで刊行されています。
こちらの作品はpixivコミックやピッコマでも配信されています。
物語の展開はゆっくりとしていて、葵をはじめとする登場人物の心の機微が丁寧に描かれています。
感情の揺れや細やかな心理描写を重視する読者に向いていると言えるでしょう。
冬葉つがる作画『月刊少年シリウス』版
もうひとつの『かくりよの宿飯』漫画版は講談社の『月刊少年シリウス』で2023年3月号から連載が始まりました。
作画を担当するのは冬葉つがる先生で、2025年7月時点では第9巻まで刊行されています。
こちらはストーリーの大筋こそ同じですが、テンポの速い展開とアクション性の強い演出が特徴です。
スピード感のある物語を楽しみたい読者に向いているといえます。
比較表:2つの漫画版の違い
文章で説明してきましたが、違いを一目で確認できるように表にまとめました。
| 項目 | B’s-LOG COMIC版(衣丘わこ) | 月刊少年シリウス版(冬葉つがる) |
|---|---|---|
| 掲載誌 | KADOKAWA『B’s-LOG COMIC』 | 講談社『月刊少年シリウス』 |
| 連載開始 | 2016年 | 2023年 |
| 単行本 | 11巻まで刊行(2025年時点) | 9巻まで刊行(2025年7月時点) |
| 作風 | ゆっくりとした展開、心理描写が丁寧 | スピーディな展開、アクション性が強い |
| 読者層 | 女性向け | 少年・青年層向け |
『かくりよの宿飯』漫画版はなぜ2つある?

それでは、なぜ『かくりよの宿飯』には2種類の漫画版が存在しているのでしょうか。
公式に明言はされていませんが、いくつかの理由が考えられます。
幅広い読者に作品を読んでもらうため
ひとつは雑誌ごとの読者層の違いです。
『B’s-LOG COMIC』は女性をターゲットにしている一方、『月刊少年シリウス』は少年・青年層を対象としています。
同じ原作を異なる掲載紙で見せることで幅広い読者に作品を届けていると考えられます。
違った演出で作品の魅力を引き出すため
また、市場の拡大を狙った戦略の一環である可能性もあります。
作画を担当する漫画家の個性を活かして、衣丘わこ版は恋愛や情感を中心に、冬葉つがる版はアクションやスピード感を強調するなど、作品の多面的な魅力を引き出している点も見逃せません。
出版社間の契約等による結果
また、出版社間のライセンス契約や協力体制の中で、自然に2種類の漫画版が生まれた可能性も考えられます。
作品の漫画化にあたっては、原作の出版社だけでなく、他社にライセンスを提供して別の雑誌で展開するケースも珍しくありません。
『かくりよの宿飯』においても、KADOKAWAはもともとの読者層である女性向けにコミカライズを行い、講談社は少年誌らしいテンポ感を重視した形で参入した、と見ることができます。
出版社同士が競合しながらも、結果的に作品の認知度や市場規模を拡大する相乗効果が生まれているのかもしれません。
『薬屋のひとりごと』もマンガ版が2つ
同じような例としてよく挙げられるのが『薬屋のひとりごと』です。
この作品も
- スクウェア・エニックス版(ビッグガンガン版)
- 小学館版(サンデーGX版)
の2種類の漫画が並行して存在しています。
ビッグガンガン版はキャラクターのかわいらしさや恋愛要素が魅力であるのに対し、サンデーGX版はシリアスなタッチでミステリー要素を強調しています。
公式に理由は示されていませんが、読者層を広げるために複数の漫画版を用意していると考えられています。
『かくりよの宿飯』も同様に、複数の読者層にリーチするための戦略的な展開である可能性が高いでしょう。
まとめ
『かくりよの宿飯』の漫画版が2種類存在する理由は公表されていませんが、読者層の違いや作風の個性を考えると、それぞれに役割があると考えられます。
情緒豊かな物語をじっくり味わいたい方はB’s-LOG COMIC版を、テンポの良い展開で物語を楽しみたい方は月刊少年シリウス版を選ぶとよいでしょう。
もちろん、両方を読み比べることで、同じ物語の異なる魅力を体験することもできます。
原作やアニメを知っている人も、漫画版を読むことで新たな発見があるはずです。

